過去の成功体験に縛られ、新たな分野への一歩を踏み出せなかった状態から脱却したコーチング体験談
コーチングを受ける前の状況と悩み
私は長年、特定の専門職としてキャリアを積んでまいりました。これまでの経験を通じて一定の成果を上げ、周囲からも評価をいただいてきたことは、私の自信の源でもありました。しかし、数年前から別の分野に強い関心を持つようになり、将来的にそちらへキャリアの軸足を移したいと考えるようになりました。
新しい分野は、これまでの私の専門性とは異なるスキルや知識が求められる領域です。情報収集を進めるほどに、その分野の奥深さや、そこで活躍されている方々のレベルの高さを実感し、同時に「今の自分にそれができるのだろうか」という強い不安を感じるようになりました。特に、これまでの成功体験が、新しい環境での「できない自分」を想像する際に、かえって大きな壁のように立ちはだかるのを感じていました。「自分はこの専門分野だから成功できたのであって、全く違う場所では通用しないのではないか」「過去の成功は、単に恵まれた環境や運によるものだったのではないか」といった疑念が頭を巡り、一歩を踏み出す勇気が持てずにいました。
また、これまでの専門分野でのキャリアを捨てることへの抵抗や、新しい分野での未知のリスクに対する恐れもありました。漠然とした不安を抱えたまま時間だけが過ぎていく状況に、焦りを感じていました。
コーチングを受けるきっかけと期待
このような状況から抜け出したいという思いが募る中で、コーチングというものが自分の内面にある思考や感情を整理するのに役立つのではないか、と考えるようになりました。一人で考えていても同じ堂々巡りを繰り返すばかりで、客観的な視点からの問いかけや、安全な場で自分の本音を言葉にする経験が必要だと感じたのです。
いくつかの情報を得る中で、コーチングは単なるアドバイスではなく、対話を通じてクライアント自身の力で答えを見出すプロセスであると理解しました。私自身が抱える複雑な感情や自己評価の課題に対して、外部からの直接的な解決策ではなく、自分自身で向き合い、乗り越える力を養いたいという期待がありました。
具体的には、コーチングを通じて、新しい分野へ挑戦することに対する恐れの正体を明確にすること、そして、過去の経験が新しい挑戦においてどのような意味を持つのかを整理したいと期待していました。そして何よりも、自信を持って新たな一歩を踏み出すための、内なる推進力を得たいと考えていました。
コーチングのプロセスと具体的な様子
セッションは、常に穏やかで安心できる雰囲気の中で進みました。コーチは私の話を注意深く、そして全く批判することなく傾聴してくださいました。どのような考えや感情も否定されないという感覚が、自分の内面を正直に言葉にする上で非常に重要な要素であると感じました。
印象に残っているのは、コーチからのいくつかの問いかけです。例えば、「あなたがこれまでのキャリアで培ってきたスキルや経験の中で、新しい分野でも応用できるものは何だと考えますか」「もし、過去の成功や失敗といった『評価』を一切気にしなくて良いとしたら、新しい分野で何を試してみたいですか」「今感じている不安や恐れは、あなたに何を伝えようとしているのでしょうか」といった問いかけです。
これらの問いかけに対し、最初はすぐに答えが出ないこともありました。しかし、コーチが辛抱強く待ってくださったり、言葉に詰まる私に寄り添ってくださったりすることで、自分の内側にある考えや感情に深く向き合うことができました。
特に、「過去の経験の中で、新しい分野でも応用できる強み」について考える時間は、私にとって大きな気づきをもたらしました。これまで、私は過去の成功を「特定の分野でのみ通用する特殊なもの」と捉え、「新しい分野ではゼロからのスタートだ」と思い込んでいました。しかし、コーチとの対話を通じて、困難に立ち向かう際の粘り強さ、複雑な情報を整理する力、未知のことへの学習意欲など、分野を問わず活かせる汎用的なスキルや内面の強さが自分の中にあることに気づかされたのです。過去の経験は、新しい挑戦の「足かせ」ではなく、むしろ「土台」となり得るのだと、視点が大きく変わりました。
また、「もし評価を気にしないとしたら何を試すか」という問いは、私の恐れの根源にある「失敗したくない」「完璧でなければならない」という思い込みに気づかせてくれました。完璧を求めすぎるあまり、最初の一歩が踏み出せなくなっていたのです。セッションを通じて、挑戦することそのものに価値があること、失敗は学びの機会であることなど、思考の柔軟性を取り戻すことができました。
セッションを重ねるごとに、漠然とした不安は具体的な課題として捉えられるようになり、自己否定的な思考パターンに気づき、それを手放す練習をするようになりました。自分の内面にある「やりたい」という純粋な気持ちや、「自分ならできるかもしれない」という微かな可能性に光を当ててもらったように感じています。
得られた成果と変化
コーチングを終える頃には、コーチングを受ける前に抱えていた「過去の成功体験が壁になる」という感覚は薄れ、むしろ「これまでの経験をどう活かそうか」という前向きな視点に変わっていました。
具体的な成果としては、まず、新しい分野への挑戦に対する恐れが、行動を完全に停止させるほどの麻痺した状態から、管理可能なレベルまで軽減されたことです。恐れや不安が完全になくなるわけではありませんが、それらを抱えながらも一歩踏み出す勇気を持てるようになりました。
また、自己評価が大きく変化しました。過去の特定の成功だけでなく、そのプロセスで培われた自身の内面的な強さや汎用的なスキルに目を向けられるようになり、自己肯定感が高まりました。新しい分野においても、これまでの経験が必ず活きる部分があるという確信を持つことができました。
そして最も大きな変化は、新しい分野への挑戦に向けた具体的な行動を開始できたことです。情報収集をさらに深め、関連するコミュニティに参加し、小さな学習プロジェクトを始めてみました。完璧を目指すのではなく、まずは「やってみる」ことの重要性を理解し、行動することから生まれる学びや変化を楽しめるようになりました。
思考の面では、自分を縛っていた「完璧主義」や「失敗への過度な恐れ」といったパターンに気づき、より柔軟で成長志向的な考え方ができるようになりました。感情の面では、挑戦への意欲や好奇心が、不安や恐れを上回るようになったのを感じています。
コーチング体験後の影響
コーチングを受けた経験は、私の仕事や人生全般に良い影響を与えています。新しい分野への挑戦はまだ始まったばかりですが、以前のような停滞感はなく、学びと成長を楽しんでいます。これまでの専門分野での仕事においても、完璧を目指しすぎず、より柔軟な発想で取り組めるようになりました。
また、自身の内面と向き合うことの重要性を再認識し、定期的に自己内省の時間を持つ習慣がつきました。困難に直面した際も、感情に飲み込まれることなく、客観的に状況を分析し、建設的な解決策を考える力がついたと感じています。
キャリアの選択だけでなく、プライベートにおいても、自分の内なる声に耳を傾け、本当にやりたいこと、大切にしたいことに対して素直に行動できるようになってきたと感じています。コーチングは、単なるキャリアの課題解決にとどまらず、自分自身の可能性を広げ、より主体的に人生を切り拓いていくための強力なサポートとなりました。
これからコーチングを受ける人へのメッセージ
もしあなたが今、キャリアや人生の岐路に立ち、漠然とした不安や迷いを抱えているのであれば、コーチングは非常に有効な選択肢の一つになり得ると思います。一人で悩みを抱え込まず、コーチという伴走者と共に自分の内面を深く探求することで、これまで気づかなかった自分の可能性や、課題を乗り越えるための内なる力に気づくことができるでしょう。
特に、私のように過去の経験や自己評価が新しい挑戦の足かせになっていると感じている方には、コーチングをお勧めしたいです。コーチからの問いかけは、あなたの視点を変え、過去の経験に対する新しい意味付けを与え、未来への一歩を踏み出す勇気を与えてくれるはずです。
コーチングは魔法ではありません。変化は自分自身の内側から起こるものです。しかし、コーチとの対話は、その変化を促し、加速させるための強力な触媒となります。自分一人ではたどり着けなかった気づきや、見えなかった道が見えてくる体験は、きっとあなたの人生を豊かにしてくれるでしょう。最初の一歩を踏み出すことに躊躇せず、コーチングの世界に触れてみることを検討されてみてはいかがでしょうか。