自身の深い専門性を、社会全体への貢献という新たな地平に繋げるコーチング体験談
専門性の深まりと、広がりへの渇望
私は長年にわたり、ある特定の技術分野において研究開発に携わってまいりました。幸いなことに、その分野では一定の知見を深め、社内外から専門家として認められる立場にあります。日々の業務を通じて、自身の知識や経験が組織の技術力向上に貢献しているという実感はありました。
しかし、キャリアを重ねるにつれて、自身の専門性が「閉じた世界」に留まっているのではないか、という漠然とした感覚を抱くようになりました。自身の持つ知識や培ってきた思考法が、所属する組織や業界を超えて、もっと広範な社会が抱える複雑な課題、例えば環境問題や少子高齢化といったテーマに対して、どのように貢献できるのかが全く見えてこなかったのです。
特定の技術を深く掘り下げることには喜びを感じていましたが、同時に、社会全体が抱える大きな流れから隔絶されているような閉塞感も抱えていました。自身のスキルや経験が、もっと大きな意味を持つ可能性があるのではないか、という内なる問いが常にありました。貢献したいという思いは漠然とありましたが、それを具体的にどの方向へ、どのように繋げればよいのかが全く分からず、内面には燻りのようなものが蓄積されていきました。
コーチングへの期待と選択
このような状況を変えたい、自身の内にある貢献への思いを明確にし、具体的な方向性を見出したいと考えるようになりました。書籍を読んだり、異業種交流会に参加したりもしましたが、断片的な情報や他者の成功事例に触れるだけでは、自身の固有の状況に即した答えは見出せませんでした。
ちょうどその頃、旧知のビジネスパーソンから、自身の内省を深め、新たな視点を得るためにコーチングが有効であったという話を聞きました。これまでコーチングは、目標達成やキャリアアップといった、より短期的な成果に焦点を当てるものだと考えていましたが、その話を聞き、自身の抱えるような、漠然とした問いや内面的な探求にも役立つ可能性があるのではないか、と考えを改めました。
私は、コーチングを受けることで、自身のこれまでの経験や知識が持つ「本質的な価値」を再認識し、それが自身の専門分野の外の世界、特に社会課題といった広範な領域とどのように繋がりうるのか、その道筋が見えるようになることを期待しました。また、自分一人では整理しきれない思考や感情を、コーチとの対話を通じて明確に言語化できること、そして、漠然とした貢献への意欲を、具体的な行動に繋がるレベルまで落とし込めることを願っていました。
セッションでの内なる探求
初めてのセッションは、穏やかな雰囲気で始まりました。コーチは私の話を丁寧に聴き、私が抱える悩みや漠然とした思いを、批判することなく受け止めてくださいました。印象的だったのは、私の専門分野や現在の仕事について深く掘り下げるだけでなく、幼少期の体験や、社会に対して感じていること、理想とする未来像など、これまでの私の思考の枠を軽やかに超えていくような問いかけが多かったことです。
「〇〇さんの専門分野の知識が、全く異なる分野の人々にどのような価値をもたらす可能性があると思いますか」 「もし時間やリソースに制限がなければ、どのような社会課題に関わりたいと感じますか、それはなぜですか」 「ご自身の人生で最も情熱を注いできたことは何ですか、それは現在の専門性や社会への貢献という思いとどう繋がるでしょうか」
このような問いに答えるうちに、自身の専門性が持つ汎用性や、私自身の価値観、そしてそれが社会とどう関わっていきたいかという根源的な欲求が、少しずつ解きほぐされていく感覚を得ました。これまで「技術的な正しさ」や「論理的な整合性」といった尺度でしか自身の知識を捉えていなかったことに気づき、それが持つ「人間的な価値」や「社会的な意義」といった、より広い視点から見つめ直すことができたのです。
セッションが進むにつれて、自身の内面に無意識のうちに存在していた「専門分野以外のことは分からない」「自分には社会全体を変えるような影響力はない」といった自己限定的な思考や、新しい領域への一歩を踏み出すことへの潜在的な恐れにも気づくことができました。コーチはそれらの感情や思考に寄り添いながらも、「もしその制約がなかったとしたら、何が可能になるでしょうか」といった問いかけを通じて、私の視野を広げていきました。
得られた成果と変化
コーチングを通じて得られた最も大きな成果は、漠然としていた「社会に貢献したい」という思いが、自身の専門性を核としながらも、それを異分野と掛け合わせることで、具体的な社会課題解決に貢献できる可能性がある、という明確な認識に変わったことです。
自身の専門分野で培った「複雑なシステムを分析し、本質を見抜く力」や「データに基づいた論理的な思考力」といったスキルが、環境問題や都市開発といった異分野の課題解決においても非常に価値があることを、内面から納得できるようになりました。単なる知識の羅列ではなく、思考のツールとしての自身の専門性の価値を再認識できたのです。
また、コーチングを通じて、自身がどのような社会課題に対して、特に情熱を感じるのかが明確になりました。それは「テクノロジーを活用して、人々の生活の質の向上に貢献する」という、比較的抽象的なものから、「自身の分析力を活かし、異分野の専門家と連携して、地域における〇〇問題の解決策を探求する」といった、より具体的な方向性として言語化されました。
これに伴い、具体的な行動への一歩を踏み出せるようになりました。これまで躊躇していた異分野の勉強会や、社会課題に関わるオンラインコミュニティに積極的に参加するようになり、そこで得られる新たな視点や、自身とは異なるバックグラウンドを持つ人々との交流が、さらなる学びと刺激を与えてくれています。内面に抱えていた閉塞感や燻りは減少し、未来に対する明確な希望と、自身のキャリアがまだ発展途上であるという前向きな感覚を持つようになりました。
コーチング体験後の影響
コーチングを受けた経験は、その後の私の仕事や人生に多大な影響を与えています。日々の業務においても、単に技術的な課題解決に留まらず、「この技術は、将来的に社会のどのような課題に貢献しうるか」「この知見は、異分野でどのように応用できるか」といった、より広い視野で物事を捉えるようになりました。これにより、仕事に対するモチベーションが再燃し、新たな視点から自身の業務を見つめ直すことができるようになりました。
また、異分野の専門家との交流を通じて、自身の知識や経験を異なる言葉で説明する必要に迫られることで、自身の専門性をより深く理解し、再構築する機会にもなっています。これは自身の成長に繋がり、プロフェッショナルとしての自信を深めることにも繋がっています。
自身のキャリアに対する捉え方も変化しました。これまでは単一の専門分野を極めることに囚われていましたが、現在は自身の専門性を基盤としつつも、それを拡張し、異分野と連携することで、より大きな価値を社会に提供していくという、多角的なキャリアパスを視野に入れることができるようになりました。
これからコーチングを受ける人へのメッセージ
もしあなたが、特定の分野で一定の経験を積み重ねてきたものの、自身の知識やスキルをどのように社会に還元していけば良いか悩んでいる、あるいは、自身の内面に漠然とした燻りや閉塞感を抱えているのであれば、コーチングは非常に有効な手段となり得ると感じています。
コーチは答えを教えてくれるわけではありません。しかし、質の高い問いかけを通じて、あなたが自分自身の中にある答えに気づく手助けをしてくれます。自分一人では決して到達できなかったであろう思考の深みや、新たな視点を得ることができます。
特に、専門性が深まるにつれて視野が狭くなりがちだと感じている方や、自身の内にある「貢献したい」という漠然とした思いを具体的な行動に繋げたいと考えている方にとって、コーチングは自身の内面とじっくり向き合い、未来への羅針盤を見つけるための強力なサポートになるはずです。一歩踏み出すことで、自身の可能性が大きく広がる体験を、ぜひ経験していただきたいと思います。