知的好奇心の「羅針盤」を見つける:発散する関心を統合し、学びとキャリアの方向性を定めたコーチング体験談
コーチングを受ける前の状況と悩み
私は研究開発分野で長年キャリアを積んできましたが、仕事で求められる専門領域に加え、個人的な関心領域が非常に広く、常に様々なテーマについて学び、探求することを止められませんでした。科学技術史から哲学、認知科学、都市論、芸術論など、興味の対象は多岐にわたります。新しい知識を得ることは非常に楽しいのですが、その学びが仕事に直接的に結びつくわけではなく、かといって明確な趣味として割り切れるものでもありませんでした。
時間を見つけては関連書籍を読み漁ったり、オンライン講座を受講したりするのですが、それぞれの関心がバラバラな状態で蓄積されていく感覚があり、「結局、自分は何を目指しているのだろうか」「この分散したエネルギーを、どうすればもっと生産的な方向に活かせるのだろうか」という漠然とした悩みを抱えていました。自身の知的なエネルギーが、まるで焦点の定まらない光のように発散してしまっているような感覚です。
コーチングを受けるきっかけ
ある時、自身の専門分野とは異なる領域の知識が必須となる、非常にチャレンジングなプロジェクトに携わることになりました。この機会に、これまで個人的に探求してきた知識が活かせるかもしれないと期待し、意欲的に取り組んだのですが、プロジェクトの目標達成という現実的な要求と、自身の尽きない知的好奇心からくる「もっと深く知りたい」という衝動との間で、時間的な制約もあり、次第に板挟みになっていきました。
プロジェクトは無事に完了したものの、その過程で「私のこの探求心は、単なる知的な遊びに過ぎないのだろうか」「これを仕事やキャリアとして昇華させるには、どうすれば良いのだろうか」という疑問が強く湧き上がりました。このままでは、いつまで経っても「本業」と「広すぎる関心事」の間でエネルギーを消耗してしまうのではないか、自身の能力や可能性を十分に活かせていないのではないかという危機感を覚え、プロフェッショナルな視点から自身の状況を整理し、方向性を見つけるサポートを受けたいと考え、コーチングを検討し始めました。
コーチングへの期待
コーチングを受けるにあたり、最も期待していたのは、自身の多様な関心事や探求心を、一つの軸として整理し、そこから具体的なキャリアや活動の方向性を見出すことです。漠然とした「何となく面白い」というレベルから脱却し、自身の内側にある探求の衝動を、意味のある形、社会や仕事への貢献に繋がる形に昇華させるための道筋を見つけたいと考えていました。また、エネルギーの分散を抑え、自身の知的活動に一貫性を持たせることで、より充実感と手応えのある日々を送れるようになることを願っていました。
コーチングのプロセスと具体的な様子
セッションは、私の話にコーチが深く耳を傾けてくれる、非常に落ち着いた雰囲気の中で進みました。最初は、頭の中でごちゃ混ぜになっていた様々な関心事や、それらがキャリアに繋がらないことへの焦燥感を、思いつくままに話しました。コーチはそれらを遮ることなく受け止め、「なるほど、様々な分野に興味をお持ちなのですね」「それらを一つずつ紐解いていきましょう」と促してくれました。
特に印象に残っているのは、「あなたが探求している様々なテーマの『共通項』は何だと思いますか」「それぞれの興味は、あなたにとってどのような『意味』を持っていますか」「もし時間や制約が一切ないとしたら、最も深く探求したい『問い』は何ですか」といった問いかけです。これらの問いによって、これまで単なる「好きなこと」「面白いこと」として無秩序に捉えていた自身の関心事が、実は私の根底にある「ある大きな問い」に対する答えを探すための、多角的なアプローチであることに気づき始めました。
例えば、歴史、哲学、認知科学といった一見バラバラな興味は、「人間はどのように世界を認識し、思考し、行動するのか」という根源的な問いに繋がっているのかもしれない、都市論や芸術論は「人間が集まって生み出す文化や社会」という問いに繋がっているのかもしれない、といった具合に、それぞれの関心が自身の内側にある「探求の羅針盤」によって指し示されている方向に、無意識のうちに進んでいたのではないか、と感じるようになりました。
セッションを重ねるにつれて、私は「自分は集中力がないわけではなく、むしろ一つの大きな問いに対して多角的にアプローチするのが得意なタイプなのではないか」「私の強みは、異なる分野の知見を繋ぎ合わせることで、既存の枠にとらわれない新たな視点を見出すことにあるのではないか」と、自身の探求スタイルを肯定的に捉えられるようになりました。当初抱えていた「自分は軸がない」「エネルギーが分散している」というネガティブな自己認識が、「これは私の強みであり、ユニークな探求のスタイルである」というポジティブな認識へと変化していったのです。
得られた成果と変化
コーチングを通じて得られた最大の成果は、自身の多様な知的好奇心が、実は一つの「大きな問い」や「根源的な探求テーマ」に繋がっているという気づきと、その探求スタイルを肯定的に受け入れられるようになったことです。これにより、以下のような具体的な変化が現れました。
第一に、学びや情報収集の際に「これは自身の探求テーマにどう繋がるのだろうか」という明確な判断軸を持つことができるようになりました。これにより、情報過多の現代において、何に時間とエネルギーを投じるべきかの優先順位をつけやすくなり、単なる知識の羅列ではなく、意味のある学びとして蓄積できるようになりました。
第二に、自身の探求テーマを核とした、具体的なキャリアや活動の方向性が見え始めました。すぐに具体的な職種や役割が決まったわけではありませんが、自身がどのような領域で、どのような形で社会に貢献していきたいのか、そのためにどのようなスキルや知識をさらに深める必要があるのか、といった「進むべき方向」が明確になりました。
第三に、エネルギーの分散が減り、自身の探求テーマに関連する活動により集中できるようになりました。これは、自身の知的活動に意味と目的が見出せたことによるものであり、結果として生産性やアウトプットの質も向上しました。
コーチング体験後の影響
コーチングを受けた経験は、私の仕事や人生観に深い影響を与えています。自身の探求スタイルを肯定的に捉えられるようになったことで、以前のような焦燥感や漠然とした不安は大きく軽減されました。むしろ、自身の多様な関心は、私独自の強みであり、未来を切り拓くための推進力であると信じられるようになりました。
また、異なる分野の知見を統合することに対する自信がついたことで、仕事における問題解決や新しいアイデアの発想においても、より広い視野で物事を捉えられるようになりました。周囲とのコミュニケーションにおいても、自身の興味関心を単なる個人的な趣味として語るのではなく、自身の探求テーマに基づいた視点や考えとして、自信を持って伝えられるようになりました。これにより、周囲からの理解や共感も得やすくなったと感じています。
コーチングは、私にとって「自分自身という広大な地図の中に、探求すべき『本質的な問い』という羅針盤を見つけ出す旅」でした。そして、その羅針盤に従って進むことで、これまでバラバラに見えていた点と点が繋がり、自身の知的活動に一貫性と方向性が生まれたのです。
これからコーチングを受ける人へのメッセージ
もしあなたが、自身の内側にある多様な関心や、漠然とした「何かを探求したい」という衝動を抱えつつも、それがどのようにキャリアや人生に繋がるのか分からず、立ち止まっているとしたら、コーチングは非常に有益な選択肢となり得ます。
自身の頭の中にある考えや感情、そして一見まとまりのないように見える興味の断片を、コーチという信頼できるパートナーと共に紐解いていくプロセスは、時に自身の知らなかった内面に光を当ててくれます。コーチは、あなた自身の言葉の中から、あなた自身すら気づいていない「探求の羅針盤」を見つけ出す手伝いをしてくれるでしょう。
コーチングは魔法ではありませんが、自身の内側にある可能性を引き出し、それを具体的な行動や方向性へと繋げるための強力な伴走者となります。自身の探求の旅を始める勇気を持ち、ぜひコーチのサポートを受けてみることをお勧めいたします。きっと、新しい世界が開けるはずです。