コーチング体験談ファイル

「良いアイデア」を「動かす力」に変える:周囲を巻き込み、構想を実現したコーチング体験談

Tags: コーチング体験談, リーダーシップ, コミュニケーション, 企画推進, 組織活性化, 自己成長

コーチングを受ける前の状況と悩み

私は長年、企業の企画部門で働いてきました。常に新しいアイデアや、改善すべき点を見つけることに喜びを感じており、それは自身の強みでもあると認識していました。しかし、どれだけ「これは良い」と思える構想を温めても、それを社内で承認させ、関係部署の協力を得ながら具体的なプロジェクトとして推進していく過程で、常に壁にぶつかっていました。

私の提案は、初期段階では関心を持たれるものの、次第に「リソースがない」「前例がない」「難しい」といった理由で停滞するか、骨抜きにされてしまうことが多かったのです。自分としては論理的に説明しているつもりでも、どうにも周囲を巻き込み、アイデアを「皆で実現したいもの」に変えていく力が足りていないと感じていました。情熱だけが空回りし、自身のアイデアが「実現しない机上の空論」で終わってしまうことへの焦燥感と無力感を募らせていました。

コーチングを受けるきっかけ

このような状況が続き、自身のキャリアや役割に対して閉塞感を感じ始めた頃、異業種交流会で知り合った方がコーチングを受けている話を聞く機会がありました。その方が、「コーチとの対話を通じて、自分では気づけなかった視点や、行動を変えるヒントが見つかった」と話されていたのが印象に残りました。

これまでの私は、問題解決は一人で考え抜くか、専門的な知識を深めることで可能になると思っていました。しかし、私の課題は知識やアイデアの不足ではなく、それを周囲に伝え、共に実現するプロセスにある。もしかすると、自分自身の内面やコミュニケーションの癖に原因があるのかもしれない。そう考えたとき、他者との対話を通じて内省を深めるコーチングが有効かもしれないと感じたのです。

コーチングへの期待

コーチングを受けるにあたり、私が期待していたのは、主に以下の二点でした。

一点目は、自身のアイデアや構想を、社内の様々な立場の人々に効果的に伝え、共感を呼び起こすための具体的なコミュニケーション方法を見つけることです。論理だけでなく、人々の心に響くような伝え方や、アイデアの価値を多角的に示す術を身につけたいと考えていました。

二点目は、周囲を巻き込み、協力体制を築くためのアプローチを明確にすることです。単なる指示や依頼ではなく、人々が自律的に関わりたいと感じるような、プロジェクト推進におけるリーダーシップのあり方を理解し、実践できるようになりたいと願っていました。停滞している状況を打開し、自身のアイデアを実現へと導く道筋を見出すことを強く期待していました。

コーチングのプロセスと具体的な様子

初めてのセッションは、落ち着いた雰囲気の中で始まりました。コーチは私の話を深く、丁寧に聴いてくださる姿勢を示してくださいました。私が抱える課題やこれまでの経緯を話す中で、コーチからの率直な問いかけに何度かハッとさせられました。

例えば、「あなたのアイデアの『良い点』は、あなたにとってなぜ『良い』と感じられるのですか。そして、その『良さ』は、話を聞いている人にとって、どのような意味を持つのでしょうか」という問いです。私はアイデアの論理性や新規性ばかりに目を向けていましたが、この問いによって、アイデアが他者、特にこれから協力を仰ぐ人々にとって、どのようなメリットや価値をもたらすのか、という視点が決定的に欠けていたことに気づかされました。

また、「そのアイデアを『実現したい』と最も強く願っているのは、あなた自身でしょうか。それとも、そのアイデアによって利益を得るであろう誰かでしょうか」という問いは、私の内にある「自分が認められたい」という欲求や、「アイデアそのもの」への執着が、かえって周囲との間に隔たりを作っていた可能性を示唆しました。

セッションでは、これらの問いかけを通じて、自分の内面にある動機や、アイデアに対する無意識の思い込み、そして周囲に対する一方的な視点に気づいていきました。コーチは答えをくれるのではなく、私が自分自身の中から答えを見つけ出す手助けをしてくれたのです。感情が動くこともありましたが、コーチは常に冷静かつ温かく見守ってくれました。次第に、停滞の原因は外部環境だけでなく、自身の内面やアプローチにあることを素直に受け入れられるようになりました。

得られた成果と変化

コーチングを通じて得られた最大の成果は、自身のアイデアを推進する上で、「何を、誰に、どのように伝えるべきか」という点について、全く新しい視点と具体的なアプローチを獲得できたことです。

セッションで得た気づきを基に、私はすぐに自身のコミュニケーションスタイルを見直しました。アイデアの全体像を熱弁する前に、まず相手の部署が抱える課題や関心事を丁寧にヒアリングする時間を設けるようにしました。そして、私のアイデアが、どのように相手の課題解決に繋がるのか、どのようなメリットをもたらすのかを、相手の言葉や関心に寄り添いながら説明する練習を重ねました。

また、プロジェクトの早い段階から関係部署のキーパーソンに非公式な形で構想を共有し、意見や懸念を丁寧に聞き取る「根回し」の重要性を理解し、実践しました。これは、これまでの私には「本筋ではない」と考えて避けていたアプローチでしたが、コーチとの対話を通じて、むしろプロジェクト成功には不可欠な「人間的な繋がりと信頼構築のプロセス」であると腑に落ちた結果です。

これらの行動の変化により、驚くほど周囲の反応が変わりました。私の話を以前より真剣に聞いてくれるようになり、懸念点が率直に述べられるようになり、さらには具体的な協力案や改善案を自発的に提案してくれる人々が現れ始めたのです。停滞していた構想が、多くの人々の関心と協力を得て、具体的なプロジェクトとして動き始めました。これは、一人で悩んでいた時には考えられなかった変化です。

コーチング体験後の影響

コーチング体験は、私の仕事の進め方だけでなく、キャリア全体に対する考え方にも大きな影響を与えました。以前は「アイデアの質こそが全て」と考え、一人で完璧な企画を作り上げることに価値を見出していましたが、今では「アイデアを形にするプロセスにおける、人との繋がりや巻き込みの力こそが重要である」と痛感しています。

この気づきは、他のプロジェクトへの関わり方にも活かされています。部署を跨いだ調整が必要な場面でも、以前のように孤立感を覚えることはなく、積極的に関係者との対話を図り、協力を仰ぐことができるようになりました。自身の強みであるアイデア創出力と、新たに得た巻き込みの力が組み合わさることで、より大きな成果を生み出せる手応えを感じています。仕事に対する充実感が以前よりも格段に高まりました。

これからコーチングを受ける人へのメッセージ

もしあなたが、私のように素晴らしいアイデアや構想を持ちながらも、それを周囲に伝え、協力者を募り、実現へと導くプロセスに課題を感じているのであれば、コーチングを検討してみる価値は十分にあると思います。

コーチングは、魔法のように全ての課題を一瞬で解決してくれるものではありません。しかし、優れたコーチとの対話は、自分自身では見つけることのできなかった内面のブロックや、思考・行動のパターンに気づかせてくれます。そして、その気づきを基に、具体的な行動変容へと繋がる一歩を踏み出す勇気を与えてくれます。

自身の内にある可能性を最大限に引き出し、周囲と共に目標を実現していくために、コーチングは非常に有効な自己投資となり得るでしょう。ぜひ、自身の未来のために、コーチングという選択肢を探求してみてください。