「言葉にならない知」を言語化し、論理的な説明と合意形成を可能にしたコーチング体験談
コーチングを受ける前の状況と悩み
私は長年、ある特定の専門分野で研究開発に携わってまいりました。経験を積むにつれて、複雑な状況や新しい概念の核心を一瞬で掴む、いわゆる「深い洞察」や「直感」のようなものが働く感覚を持つようになりました。しかし、その「分かっている感覚」をチームメンバーや他部署の担当者に対して、論理的かつ分かりやすく説明し、理解や納得を得ることに非常に苦労していました。
頭の中では、様々な情報や概念が有機的に繋がり、結論へと至る道筋が見えているのです。ですが、それを言葉にしようとすると、断片的になったり、飛躍しすぎたりしてしまい、「なぜそうなるのか」「その根拠は何か」といった問いに、相手が納得する形で明確に答えられないことが多々ありました。「分かっているはずなのに、説明できない」というもどかしさが常にあり、会議で自分のアイデアを提案しても、うまく伝わらずに議論が深まらなかったり、時には誤解されたりすることも少なくありませんでした。自身の専門性が十分に活かせていない、組織への貢献度が限定的になっているのではないか、という悩みを抱えていました。
コーチングを受けるきっかけ
あるプロジェクトにおいて、私の深い洞察に基づいた重要な提案が、論理的な説明の不足からチームの理解を得られず、進行が危ぶまれる事態に直面しました。この時、自分の内側にある「知」を外に出し、他者と共有し、共に物事を進めるためには、これまでのやり方では限界があることを痛感しました。
自身の内面にある思考プロセスや、言葉にならない感覚をどうにか整理し、他者に伝わる形にしたい。そう考えた時に、自分一人で考えていても同じことの繰り返しになるだろうと感じ、専門的なサポートを求めることにしました。過去にコーチングを受けた知人から話を聞く機会があり、内面を掘り下げ、思考を整理する上で有効である可能性を感じ、コーチングを受けてみることを決意しました。
コーチングへの期待
コーチングを受けるにあたり、私が期待していたのは主に二つです。一つは、頭の中にある複雑な思考や、言葉にならない直感を論理的に整理し、言語化する能力を高めることです。もう一つは、異なる知識や視点を持つ相手にも、私の考えの意図や根拠が正確に伝わるような、説明力とコミュニケーション能力を向上させることでした。
自分の内なる「知」に自信を持ち、それを周囲に適切に伝えることで、プロジェクトや組織に、より主体的に、より大きく貢献できるようになりたいと考えていました。
コーチングのプロセスと具体的な様子
私のコーチは、非常に落ち着いた雰囲気をお持ちの方でした。セッションは、私の抱える悩みや、なぜそれが起こるのかといった背景について、じっくりと耳を傾けることから始まりました。
印象的だったのは、私が「言葉にならないんです」と言う度に、コーチが「その『言葉にならない』感覚は、どのような状態ですか?」「それが言葉にならない時、頭の中では何が起こっていると感じますか?」のように、さらに具体的な問いを重ねてくださったことです。単に「言語化できない」という事実だけでなく、その裏にある私の思考の癖や、情報の捉え方、感情的な側面にも光を当ててくれました。
セッションの中盤では、私が特定の洞察に至った具体的な事例を取り上げ、「その結論に、どのようなステップを経てたどり着いたと感じますか?」「もし、それを誰かに説明するなら、最初に何を伝えますか?」といった問いを通して、自身の思考プロセスを細かく分解していく練習をしました。最初は戸惑いましたが、コーチの根気強い問いかけに応えるうちに、曖昧だった思考の断片が少しずつ繋がり、道筋が見えるような感覚を得ました。
また、コーチは「あなたの『分かっている感覚』を支えている、核となる『信念』は何ですか?」と尋ねられました。これは技術的な側面だけでなく、私がその専門分野に対して持つ深い関心や、重要だと感じている価値観に気づかせてくれる問いでした。単に事実や論理を並べるだけでなく、そのアイデアがなぜ重要なのか、どのような未来に繋がるのかといった「意義」の部分から語る視点の重要性を教えていただいたように感じます。
セッションを重ねるうちに、自分の思考が整理されていく感覚が明確になり、それまで感じていた焦りやフラストレーションが軽減されました。頭の中の「モヤモヤ」が晴れ、思考の筋道が見えるようになったことで、落ち着いて状況を分析し、言葉を選ぶことができるようになりました。
得られた成果と変化
コーチングを通じて、私は自身の内なる「知」を外に出すための具体的な「型」や「プロセス」を身につけることができました。複雑な洞察を、相手の理解度に合わせて段階的に説明する構成力を養うことができ、また、抽象的な概念を具体的な例えや構造を使って説明する引き出しが増えました。
セッションで思考プロセスを分解する練習をしたことで、会議などで説明する際に、頭の中で自然とその手順を追えるようになり、論理的な飛躍を減らすことができました。相手からの質問に対しても、落ち着いて思考の出発点に戻り、丁寧に説明を組み立て直すことができるようになりました。
その結果、会議での発言が以前より具体的で分かりやすくなったと、チームメンバーからフィードバックをもらう機会が増えました。私の提案が理解され、建設的な議論につながることが増え、プロジェクトがスムーズに進むのを実感しています。また、自身の「言葉にならない感覚」に対して抱いていた「説明できないのは理解していないからだ」という自己否定感が薄れ、深い洞察に対する自信が高まりました。
コーチング体験後の影響
コーチングを受けた経験は、私の仕事の進め方に大きな変化をもたらしました。以前は、自分のアイデアが伝わらないことへのフラストレーションから、一人で抱え込んでしまうこともありましたが、今は積極的に周囲とコミュニケーションを取り、自身の考えを共有しながら共に問題を解決していくスタイルに変わりました。チーム内での信頼関係が深まり、より協働的に仕事を進められるようになりました。
また、自身の思考を言語化するプロセスは、新たなアイデアを創出する上でも役立っています。頭の中で漠然としていた概念が、言葉にすることで明確になり、次に何を考えるべきかが見えやすくなりました。
将来的には、後輩の指導や社外への発信活動にも、この言語化・説明力を活かしていきたいと考えています。自身の専門性を、より広く社会に還元できる可能性を感じており、自身のキャリアにおいても、より主体的に新しい道を切り拓いていけるという確信を持つことができました。
これからコーチングを受ける人へのメッセージ
もしあなたが、私のように頭の中に確かな「何か」があるにも関わらず、それを言葉にして他者に伝えることに難しさを感じているとしたら、コーチングは非常に有効な手段となり得ます。自分一人では気づけない思考の癖や、言葉にできない理由を、コーチの問いかけを通じて客観的に見つめることができます。
「言葉にならない」という悩み自体が、コーチングという言語化のプロセスを通じて、解決への糸口となるのです。自身の内側にある「知」は、外に出して初めて他者と共有でき、社会に影響を与え得ます。その最初の一歩を踏み出す勇気を持ち、プロのコーチに伴走してもらうことで、きっと新たな世界が開けるでしょう。あなたの内なる「知」を、輝かせる体験になるはずです。