コーチング体験談ファイル

自分の感情や考えに気づき、納得のいく選択ができるようになったコーチング体験談

Tags: 自己理解, 意思決定, 感情, 内省, 迷いの解消

コーチングを受ける前の状況と悩み

私は長年、特定の専門分野でキャリアを積んでまいりました。周囲からは堅実で論理的な人間だと評価されており、私自身もそう自認しておりました。与えられた課題に対しては、論理的に考え、効率的に解決策を見つけ出すことに長けていたからです。

しかし、キャリアの次のステップや、仕事と私生活のバランスについて、漠然とした迷いを抱えていました。具体的に「これがしたい」という強い願望があるわけではなく、かといって現状維持で心から満たされているわけでもありません。常に「自分はどうあるべきか」「周囲にどう見られるか」を基準に考えている節があり、自分自身の内側から湧き上がる感情や本当に求めているものに、ほとんど意識を向けてきませんでした。

そのため、人生における重要な意思決定に直面した際、頭では複数の選択肢のメリット・デメリットを比較検討できるものの、「本当にこれで良いのか」という確信が持てず、決断を先延ばしにしたり、結局無難な道を選んでしまったりすることが度々ありました。この「決められない」状態、そして自分の本心が分からないという感覚に、漠然とした不安を感じていました。

コーチングを受けるきっかけと期待

このような状況を打開したいと考え、様々な自己啓発に関する書籍を読んだり、セミナーに参加したりもしました。確かに頭では理解できるのですが、それが自分の内面の深い変化や具体的な行動にはなかなか繋がりませんでした。

そんな折、信頼している知人からコーチングの話を聞く機会がありました。対話を通じて自分自身の内面を掘り下げ、隠れた可能性や本心に気づくことができるという話に興味を持ちました。これまでの「知識を得る」アプローチとは異なり、「自分自身と向き合う」ための手段として、コーチングが有効かもしれないと感じたのです。

コーチングを受けることへの期待は、主に二つありました。一つは、頭の中や心の中の整理です。自分が何を大切にしているのか、本当に求めているものは何なのかを明確にしたいと考えていました。もう一つは、迷いを減らし、自分自身の判断に自信を持って、納得のいく意思決定ができるようになりたい、というものでした。

コーチングのプロセスと具体的な様子

初めてのセッションは、丁寧な自己紹介とコーチングについての説明から始まりました。コーチは穏やかな雰囲気で、話をじっくりと聴いてくださいました。安心して、これまで誰にも話したことがなかった内面の迷いや、自分の感情に鈍感であることへの戸惑いを言葉にすることができました。

セッションが進むにつれて、コーチからの問いかけは、私の思考だけでなく、感情や体の感覚にも焦点を当てるものが増えていきました。例えば、「その状況について話されている時、体はどんな感じがしますか」といった問いや、「もし時間やお金、他者の期待といった制約が一切ないとしたら、最初に思い浮かぶのは何ですか」といった、固定観念を揺さぶる問いです。

最初は、自分の感情や体の感覚について聞かれても、どう答えて良いか分かりませんでした。「特に何も感じません」と答えることもありました。しかし、コーチは根気強く、そして優しく問いかけを続けてくださいました。セッションを重ねるうちに、特定の話題に触れると胸のあたりが少し重くなる、あるいは心がふっと軽くなる、といったごく微細な感覚に意識を向けられるようになっていきました。

特に印象に残っているのは、「その選択をした未来の自分は、どんな表情をしていると思いますか」という問いです。頭で考えた「正しい」選択をした未来の自分は、どこか無理をしているような、少し曇った顔を思い浮かべました。一方で、自分の内側が求める選択をした未来の自分は、晴れやかで穏やかな表情をしていたのです。このイメージの対比は、論理だけでは捉えきれない「納得感」や「心の充足」が、意思決定においていかに重要であるかを教えてくれました。

セッションを通じて、私は自分が長い間、意識的に、あるいは無意識的に、自分の感情を無視してきたことに気づきました。感情は論理的な思考を妨げるものだと捉えていたのかもしれません。しかし、コーチとの対話を通じて、感情は自分自身の深いニーズや価値観を示してくれる大切なサインであることを理解していきました。頭で考える「べき論」と、心や体が感じる「本音」との間に存在する乖離を認識し、その両方に耳を澄ませることの重要性を学びました。

得られた成果と変化

コーチングを通じて、私は自分自身の内なる声に耳を澄ませることの価値を実感しました。自分が本当に何を大切にしているのか、どのような状態を求めているのかが、以前よりも明確になりました。

具体的な成果としては、重要な意思決定の場面で、論理的な分析に加え、自分の感情や直感にも意識を向けることができるようになったことです。以前のような「本当にこれで良いのか」という迷いや不安が減り、自分が選んだ道に対する納得感や腹落ち感が格段に増しました。これは、単に迷いがなくなったというよりも、「自分がこの選択をしようと決めた」という主体性を伴う感覚です。

行動面でも変化がありました。これまでは周囲の期待や一般的な成功モデルに沿った行動を選びがちでしたが、今は自分の内側の声に従って、本当に興味のある分野について学び始めたり、自分にとって心地よい人間関係を優先したりするなど、自分自身の価値観に基づいた選択をすることができるようになりました。

思考の面では、「〜ねばならない」という考え方から、「〜したい」という気持ちを大切にする考え方へとシフトしていきました。完璧を目指すのではなく、不確実性を受け入れつつ、一歩踏み出す勇気を持てるようになりました。

感情の面では、自分の感情に気づき、それを良い悪いと判断せずに受け入れることができるようになりました。これにより、自分自身に対する否定的な感情に囚われることが減り、穏やかな気持ちで過ごせる時間が増えました。自分自身への信頼感も以前より増したように感じます。

コーチング体験後の影響とこれからコーチングを受ける人へのメッセージ

コーチングを受けた経験は、その後の仕事や人生に大きな影響を与えています。仕事においては、自分の意見や直感を信じて提案したり、新しいアプローチを試みたりすることに対する抵抗感が減りました。また、チームメンバーとの関わりにおいても、相手の言葉だけでなく、声のトーンや表情といった非言語的な情報にも意識を向けることで、より深いレベルでコミュニケーションが取れるようになったと感じています。

私生活においても、人間関係で自分の本音を穏やかに伝えることの重要性を理解し、実行できるようになりました。これにより、以前よりも満たされた、本音で付き合える関係を築くことができています。また、人生の選択全般において、外部の評価基準ではなく、自分自身の内なる満足感をより重視するようになり、日々の生活の質が向上したと感じています。

これからコーチングを受けることを検討されている方へのメッセージとして、コーチングは魔法のように答えを与えてくれるものではない、ということをお伝えしたいです。コーチは、あなたの中に眠る答えに気づかせてくれる存在です。そのためには、自分自身と誠実に向き合う時間と労力が必要になります。

特に、私のように論理的な思考を重視しがちで、自分の感情や感覚に意識を向けたことがないという方にとって、最初は戸惑うことがあるかもしれません。しかし、コーチが提供してくれる安全で信頼できる場の中で、自分の内なる声に耳を澄ませるプロセスは、きっとあなたの人生に豊かな気づきと変化をもたらしてくれるはずです。頭だけでなく、心全体で「自分が本当にどうしたいのか」を感じ取る経験は、あなたの選択に確かな自信と納得感を与えてくれるでしょう。