長年の専門知識が足かせとなり、成長が停滞していた私が新たなキャリア展望を見出したコーチング体験談
コーチングを受ける前の状況と悩み
私は長年にわたり、ある特定の専門分野で技術者としてキャリアを積んでまいりました。20年以上の経験を重ね、技術的なスキルや知識においては、社内でもベテランと呼ばれる立場におりました。日々の業務は滞りなく進み、周囲からの信頼も得ていたように感じております。しかし、一方で漠然とした停滞感を抱くようになっていました。
新しい技術や知識を学ぶ機会はありましたが、以前のような探究心や情熱が湧き上がってこないのです。自分の知っていること、できることの範囲内で仕事を進めることが増え、挑戦や新しい学びから遠ざかっている感覚がありました。後輩の育成にも携わっておりましたが、自分のこれまでの経験則を伝えることに終始し、彼らの新しい発想や可能性を引き出すような関わり方ができていないのではないか、という不安もありました。
キャリアの次のステップについても明確なビジョンが持てずにいました。管理職への昇進も視野に入らないわけではありませんでしたが、プレイヤーとしてさらに深く専門性を追求したいという気持ちも強くありました。しかし、その「追求」の方向性が見えず、まさに頭打ちになっているように感じていたのです。このまま緩やかに経験を重ねるだけで良いのだろうか、という閉塞感が常に心の中にありました。
コーチングを受けるきっかけ
このような状況の中、自己啓発書を読んだり、異業種交流会に参加したりと、自分なりに状況を打開しようと試みてはおりました。しかし、どれも一時的な刺激にしかならず、根本的な解決には至らないように感じていました。
ちょうどその頃、信頼している同僚がコーチングを受けたという話を聞きました。彼はキャリアに関する悩みを抱えていたのですが、コーチとの対話を通じて自分の価値観や強みを再認識し、具体的な行動計画を立てて活き活きと仕事に取り組むようになった、と話していたのです。その変化を間近で見て、私もコーチングというものが自身の状況に変化をもたらす可能性について興味を持つようになりました。
自分一人で考えても堂々巡りになるばかりで、客観的な視点からの問いかけやフィードバックが必要だと感じていました。長年培った経験や知識が、かえって新しい可能性を探る上での「足かせ」になっているのではないかという疑念もありました。その経験をどう整理し、どう活かしていくのか、誰かに伴走してもらいながら深く掘り下げてみたいと考え、コーチングを受けることを決意いたしました。
コーチングへの期待
コーチングを受けるにあたり、漠然とした閉塞感や停滞感が解消されることへの期待がありました。特に、以下の点を期待していました。
- キャリアにおけるモヤモヤの正体が明確になること。
- 自分自身の強みや、次に本当に取り組みたいこと、やりたいことが明確になること。
- 長年培った経験や知識を、停滞感を打破し、次のステップへ進むための力に変えるヒントを得ること。
- 自分自身では気づけない、客観的な視点や可能性に気づかせてもらうこと。
具体的な解決策を提示してもらうというよりは、自分自身で答えを見つけるためのサポートを受けたいと考えていました。
コーチングのプロセスと具体的な様子
初回セッションは、どのような雰囲気で行われるのか少し緊張しておりましたが、コーチの穏やかで落ち着いた雰囲気のおかげで、すぐにリラックスして話すことができました。コーチは私の話を丁寧に、否定することなく聴いてくださり、それだけで安心感を覚えました。
セッションでは、コーチからの問いかけが非常に印象的でした。私のこれまでのキャリアを振り返る中で、「これまでのキャリアで最も情熱を注いだ瞬間は？」「どのような状況で、どのような時に『自分らしい』と感じますか？」といった問いかけがありました。自分が当たり前だと思って意識していなかった経験や、感情が動いた瞬間に焦点を当てることで、自身の価値観や動機について深く考えるきっかけとなりました。
特に心に残っているのは、「その『停滞感』は、具体的にどのような感覚ですか？」「もしこの停滞感が何かを伝えようとしているとしたら、それは何だと思いますか？」といった問いかけです。単に「停滞している」と頭で理解しているだけでなく、それが身体や心にどのような感覚として現れているのか、そしてそれが自分自身に何を訴えかけているのか、といった内面的な側面に目を向けさせられました。
セッションを通じて、私が感じていた「停滞感」の背景には、新しい挑戦への無意識的な恐れや、過去の成功体験にしがみついている自分、そして何より「自分はもうこれ以上の成長はできないのではないか」という自己否定的な思い込みがあることに気づかされました。長年培った専門知識は、自分を守る強みであると同時に、未知の世界へ踏み出すことを躊躇させる「足かせ」にもなりうるのだと理解しました。
また、「自分らしい」と感じる瞬間の話から、私は単に技術的な課題を解決することだけでなく、自身の経験や知識を「教える」「伝える」ことで、誰かの成長をサポートすることにも大きな喜びを感じていたことを再認識しました。これが、後輩育成におけるモヤモヤの正体でもあったのです。一方的に経験を押し付けるのではなく、相手の内発的な成長をサポートしたい、という欲求があったことに気づけました。
得られた成果と変化
コーチングセッションを重ねるごとに、漠然としていた悩みや感情が整理され、具体的な課題として捉えられるようになりました。最大の成果は、長年の専門知識や経験を「足かせ」ではなく、むしろ自身のユニークな「財産」として再認識できたことです。
具体的には、以下のような変化がありました。
- 自身の強みや価値観が明確になり、キャリアの方向性に対する迷いが晴れました。プレイヤーとしての深化に加え、自身の経験を「還元する」という新たな役割（メンター、アドバイザー、教育者など）への関心が高まりました。
- 停滞感の正体を理解し、それが単なる現状への不満ではなく、新しい成長ステージへの移行を促すサインであるとポジティブに捉えられるようになりました。
- 具体的な行動として、社内外の勉強会で自身の専門知識を共有する機会を積極的に設けるようになりました。また、若手育成のためのワークショップ企画にも着手しました。
- 日々の業務における後輩との関わり方が変わりました。一方的に教えるのではなく、彼らが自ら考え、成長できるような問いかけやサポートを意識するようになりました。
- 仕事に対するモチベーションが向上し、主体性を取り戻しました。以前は受け身になりがちだった姿勢が、自ら課題を見つけ、新しいアプローチを試みる積極性に変化しました。
コーチング体験後の影響
コーチングを受けた経験は、その後の私の仕事や人生に大きな影響を与えています。キャリアに対する視野が広がり、長期的な視点で自分の成長や貢献について考えられるようになりました。
また、自分自身の内面、特に感情や思考のパターンに対して敏感になったことも大きな変化です。問題に直面した際に、感情に流されるのではなく、その感情が何を伝えようとしているのか、そして自分自身が本当に求めていることは何か、といった深い部分に目を向けられるようになりました。
他者とのコミュニケーションにおいても、一方的に話すのではなく、相手の話を丁寧に聴き、適切な問いを投げかけることの重要性を学びました。これは、コーチングを受ける側の経験を通じて、コーチングの持つ力を肌で感じたからこそ得られた視点だと感じています。
この体験を通じて、私自身も他者の成長や可能性を引き出すような支援活動（コーチングを含む）に、以前よりも強い関心を持つようになりました。
これからコーチングを受ける人へのメッセージ
もし今、あなたがキャリアや人生について漠然とした悩みや停滞感を感じているのであれば、一度コーチングを検討してみる価値はあると思います。自分一人で考えても答えが出ない、あるいは同じところをぐるぐる回ってしまうような時、コーチングは非常に強力なツールとなり得ます。
コーチはあなたに直接的な解決策を提示するわけではありません。しかし、彼らの問いかけによって、あなたは自分自身の内面に深く向き合い、これまで気づかなかった感情、思考パターン、価値観、そして可能性を発見することができるでしょう。それは、まるで自分の中に眠っていた宝物を見つけるような体験かもしれません。
もちろん、コーチングは万能ではありませんし、万人に合うわけでもないでしょう。また、コーチとの相性も重要です。可能であれば、複数のコーチの話を聞いてみることをお勧めします。
しかし、もしあなたが「変わりたい」「自分自身をもっと理解したい」「自分の可能性を探求したい」と少しでも願っているなら、その一歩を踏み出す勇気を持つことを応援いたします。コーチングは、あなたの人生における新しい扉を開く鍵となるかもしれません。