内省を深める思考から、組織へ影響を与える行動へと繋がったコーチング体験談
コーチングを受ける前の状況と悩み
私がコーチングを受け始める前、仕事においては管理職という立場で、組織の課題や将来について深く内省を重ねる日々を送っていました。様々な情報を取り入れ、複雑な状況を分析し、自分なりの解決策やビジョンを頭の中で描くことは得意だったと感じています。しかし、その思考や分析が、なかなか現実の組織における具体的な行動や、周囲を巻き込む形での変化に結びつかないことに悩んでいました。
会議で良いアイディアが浮かんでいても、完璧な論理構築ができていないと感じると発言をためらったり、組織の慣性に対して、自身の提案が受け入れられないのではないかという懸念から、積極的に働きかける一歩が踏み出せませんでした。結果として、頭の中では壮大な改革案が描かれているのに、現実には小さな変化すら起こせていないという閉塞感を抱えていました。自身の内省は深まる一方、それが組織全体の成果や、自身の貢献実感に繋がっていない状態でした。
コーチングを受けるきっかけ
このような状況が続く中で、組織の停滞感と自身の無力感に対する焦りが募っていきました。このままではいけない、何とかしてこの状況を打破したいという思いが強くなりました。一方で、これまでの自分のやり方だけでは限界があることも悟り始めていました。
知人がコーチングを受けた話を聞く機会があり、内省から行動への橋渡しをサポートしてくれる存在がいることを知りました。自身の内面を深く掘り下げることはできるものの、それを外部の世界、特に組織という複雑な環境でどのように形にしていくかという部分に課題を感じていた私にとって、コーチングはまさに必要な支援ではないかと直感しました。自身の思考を整理し、行動への具体的な道筋を見出すための、専門的なサポートを求めてコーチングを受けることを決意しました。
コーチングへの期待
コーチングを受けるにあたり、最も期待していたのは、自身の深い思考や内省を、組織への具体的な働きかけや影響力の発揮に繋げるための道筋を見出すことでした。頭の中で描いているビジョンや解決策を、どのようにすれば周囲に伝え、共感を呼び、実際のアクションへと結びつけられるようになるのか。そのプロセスを明確にし、実行に移すための自信と具体的な手法を得たいと考えていました。
また、自身の内向的な傾向が行動を妨げている側面もあると感じていたため、その特性を理解しつつも、自身の強みを活かした形で主体的に組織に関与できるようになることを期待していました。内省するだけの自分から、組織を動かす一員としての自分へと変化したい、というのが率直な願いでした。
コーチングのプロセスと具体的な様子
セッションは、非常に落ち着いた、しかし同時に心地よい緊張感のある雰囲気で進められました。コーチは私の話を注意深く聞き、私が抱える悩みの核心や、その背景にある思考パターンを丁寧に探る問いかけを繰り返されました。
特に印象に残っている問いかけの一つに、「あなたが組織に対して本当に『貢献したい』と願うのは、具体的にどのような状態が実現したときですか」というものがありました。漠然と「貢献したい」と考えていましたが、この問いによって、自分が理想とする組織の状態、そしてその中で自分がどのような役割を担いたいのかが、より鮮明になりました。これは、内省の過程では見落としていた、貢献への「意図」と「形」を一致させるための重要なステップでした。
また、「あなたの持つ深い思考や分析力は、組織のどのような課題に対して最も有効だと考えますか。そして、その思考を『頭の中』から『外の世界』に出すために、考えられる最初の一歩は何でしょうか」という問いも深く響きました。私はつい完璧なアウトプットを目指し、準備に時間をかけすぎてしまう傾向がありましたが、コーチは「完璧でなくても良い、まずは誰かに話してみる、書き出してみる、といった小さな一歩から始められる」と促してくださいました。この示唆により、行動へのハードルがぐっと下がったように感じました。
セッションを重ねる中で、自身の内省がなぜ行動に結びつかなかったのか、その根本的な原因が、外部からの評価への恐れや、変化に対する無意識の抵抗にあることにも気づかされました。コーチはそれらを否定するのではなく、「その恐れがあることを認識し、それでも一歩踏み出す選択をすることは可能だ」と、私の内面的な葛藤を受け止めた上で、前向きな行動を促す関わりをしてくださいました。思考が内向きになりがちだった私の意識が、セッションを通じて徐々に「内面で考えたことを、どう外部に表現し、影響を与えるか」という方向へとシフトしていきました。
得られた成果と変化
コーチングを通じて、まず大きな変化として実感したのは、思考を「考え抜く」だけでなく、「形にして出す」ことへの意識転換です。これまでは頭の中で完璧な回答が出るまで考え込むことが多かったのですが、「まずはドラフトでも良いから書き出してみる」「信頼できる同僚に壁打ちをしてみる」といった具体的な行動ステップを踏めるようになりました。
これにより、組織内で抱いていた課題や、それに対する自身のアイディアを、躊躇なく周囲に共有する回数が増えました。最初は小さな意見表明から始めましたが、徐々に自分の部署だけでなく、他部署との連携が必要な課題についても、積極的に提案や働きかけを行うことができるようになりました。
特に、セッションで明確になった「貢献したい状態」を目指す過程で、自身のアイディアを具体的な企画書に落とし込み、部署内で提案したことが、小さなプロジェクトとして実現したことは大きな成果でした。完璧ではない形でも、自身の思考が組織の行動に繋がり、実際に変化が生まれるプロセスを経験できたことは、私の自信に繋がりました。
感情面でも変化がありました。頭の中だけで悩んでいた頃の閉塞感や無力感が減少し、自身の行動が組織に影響を与えうるという手応えを感じることで、仕事への主体性や充実感が増しました。内省によって得た洞察を、行動という形で外に出すことの価値を心から理解できたと感じています。
コーチング体験後の影響
コーチングを受けた経験は、その後の私の仕事への取り組み方、そしてキャリア全体に大きな影響を与えています。以前は内省が先行し、行動が伴わないために評価されづらい側面があったかもしれませんが、主体的に発信し、周囲を巻き込む行動を取るようになったことで、組織内での存在感が増したと感じています。重要なプロジェクトの推進役を任される機会も増え、自身の専門性や内省力を、より効果的に組織の成果に繋げられるようになりました。
また、私自身のリーダーシップのスタイルも変わりました。一方的に指示を出すのではなく、自身の考えを丁寧に伝え、他者の意見も引き出しながら、共に目指す方向性を見定めていくという、自身の内向的な特性や内省力を活かしたリーダーシップを発揮できるようになってきたと感じています。これは、コーチとの対話を通じて、自身の強みを再認識し、それをどう活用するかを具体的に考えられたからこそ得られた変化です。
これからコーチングを受ける人へのメッセージ
もしあなたが、私のように、頭の中で多くのことを考えたり深く内省したりすることは得意でも、それを現実世界での具体的な行動や他者への影響力に繋げることに難しさを感じているのであれば、コーチングは非常に有効な手段となり得ます。
内省は自身の内面を深く理解するために素晴らしい力ですが、時に完璧主義や外部からの評価への恐れといった壁を作り出し、行動を妨げてしまうこともあります。コーチは、あなたの内面を尊重しながらも、その思考を外の世界へと橋渡しするための問いを投げかけ、具体的な行動への一歩を踏み出す勇気を与えてくれます。
私自身、コーチングを受ける前は、自身の悩みが抽象的すぎて誰かに話しても理解されないのではないか、と思っていました。しかし、コーチとの対話を通じて、曖昧だった悩みが明確になり、具体的な行動へと落とし込むことが可能だと分かりました。
内省を深めることは自身の成長に欠かせませんが、それに加えて「行動」という側面が加わることで、あなたの可能性は大きく広がります。完璧を目指す必要はありません。まずは、あなたの内にある思考やビジョンを、ほんの小さな一歩でも良いので外に出してみる勇気を持つこと。コーチングは、その最初の一歩を踏み出すための心強い伴走者になってくれるでしょう。あなたの内なる声を行動へと繋げ、より豊かな現実を創造していくプロセスを、ぜひ体験してみてください。