「器用貧乏」の悩みから脱却し、複数の専門性を統合してキャリアを切り拓いたコーチング体験談
コーチングを受ける前の状況と悩み
私がコーチングを受けることを検討し始めたのは、自身のキャリアに対して漠然とした行き詰まりを感じていた時期でした。私はIT業界でエンジニアとしてキャリアをスタートさせ、その後マネジメントの役割も経験してきました。技術分野も、フロントエンドからバックエンド、インフラストラクチャ、データ分析に至るまで、興味のある分野には広く手を出し、それぞれの基本的な知識やスキルを習得してきました。
しかし、振り返ってみると、どれか一つの分野で「この人なら」と言われるような深い専門性を確立できていないと感じていました。新しい技術や知識を学ぶことは楽しいのですが、すぐに次の新しいものに興味が移ってしまい、結果として「広く浅く」の状態になってしまうのです。周囲の同僚や部下が特定の分野でプロフェッショナルとして活躍しているのを見るにつけ、自分は中途半端で「器用貧乏」なのではないか、という悩みが募っていきました。
この「器用貧乏」という自己認識は、私の自信を揺るがしました。特にプロジェクトで特定の技術領域の深い知見が求められる場面では、自分の知識の浅さを痛感し、貢献できることの限界を感じていました。また、これからどのようなキャリアパスを描いていくべきか、自分には特定の専門分野がないまま、どこへ向かえば良いのか全く見当がつかず、漠然とした不安を抱えていました。
コーチングを受けるきっかけ
このような悩みを抱えている中で、社内のメンターとの会話がコーチングに目を向けるきっかけとなりました。メンターは私の「器用貧乏」という自己評価に対し、「それは複数の異なる分野をつなぎ合わせる力として捉えることもできるのではないか」と示唆してくれました。その言葉を聞いて、自分のネガティブな捉え方を変えるヒントがあるのかもしれないと感じました。
また、自身の内面だけでは思考が堂々巡りしてしまうことにも限界を感じていました。客観的な視点から自身の状況を整理し、思考を深めるサポートを得たいと考えたのです。いくつかの手法を検討した結果、対話を通じて自己理解を深め、未来に向けた行動を支援するコーチングが、私の求めているものに最も近いと感じ、コーチングを受けることを決めました。
コーチングへの期待
コーチングを受けるにあたり、私が最も期待していたのは、自身の抱える「器用貧乏」という悩みを解消し、自身の持つ複数の興味や経験を肯定的に捉え直すことでした。そして、それらをどのように活かして今後のキャリアを構築していくことができるのか、具体的な方向性を見出すことを期待していました。
「一つの専門分野で突出していなければ価値がない」という固定観念から自由になり、自分自身の特性や強みを明確に理解し、自信を持ってキャリアを進めていくためのヒントが得られることを願っていました。
コーチングのプロセスと具体的な様子
コーチとのセッションは、週に一度、オンラインで行われました。最初のセッションでは、私の現状の悩み、これまでのキャリアの変遷、そして私が興味を持っている様々な分野について、じっくりと話を聴いていただきました。コーチは先入観なく私の話を丁寧に聴き、私が話した内容を要約したり、感じていることについて確認したりしながら、私が自身の内面を深く掘り下げていくのをサポートしてくれました。
特に印象に残っているのは、コーチからの問いかけです。例えば、「あなたがこれまでに学んだ複数の分野の中で、共通している要素は何だと思いますか?」という問いや、「それぞれの分野に関わっているとき、あなたはどのような感情を抱いていましたか?」「もし、『器用貧乏』という言葉を使わずに、あなたの今の状態を表現するとしたら、どのような言葉が思い浮かびますか?」といった問いかけがありました。
これらの問いに対して考えていくうちに、私は、一見バラバラに見える私の興味や経験が、実は「新しい知識を得ることへの探求心」や「複雑なものを理解しようとする知的欲求」といった、私自身の根本的な興味や価値観によって繋がっていることに気づきました。また、「器用貧乏」という言葉が、私の可能性を狭める自己否定的なラベルであることにも気づかされました。コーチと共に、私の特性をポジティブに捉え直す言葉を探る過程で、「異なる分野の知識を組み合わせて新しい視点や価値を生み出すことができる」といった表現が浮かび上がり、少しずつ自分に対する見方が変わっていきました。
セッションを重ねるごとに、私は自身の経験や興味に対して、以前のような否定的な感情ではなく、好奇心や探求心といった肯定的な側面を見出せるようになっていきました。コーチは私の言葉の端々から私が本当に価値を置いているものを引き出し、それを私自身が認識できるよう促してくれました。
得られた成果と変化
コーチングを通じて、最も大きな成果は、「器用貧乏」という自己認識から解放され、自身の持つ複数の興味や経験を肯定的に捉えられるようになったことです。これは単なる気休めではなく、コーチとの対話を通じて、それぞれの経験から何を学び、それがどのように自分の中に蓄積されているのかを具体的に言語化できたことによる、確固たる自己認識の変化でした。
自身の強みが「異なる分野の知識や経験を組み合わせ、新しい視点や解決策を生み出すこと」にあると明確に理解できたことで、今後のキャリアに対する漠然とした不安が大きく軽減されました。「一つの道を極める」ことだけがキャリアではない、自分らしい形で貢献できる道がある、と心から思えるようになったのです。
具体的な行動の変化としては、社内で複数の技術領域に関わる新規事業開発プロジェクトのメンバー募集があった際に、以前なら躊躇していたであろう場面で積極的に手を挙げ、参画することができました。そこでは、それぞれの技術分野の専門家たちが交わす議論を理解し、異なる視点を繋ぎ合わせる役割を担うことができ、自身の強みを活かせているという実感を得ています。また、自身の学びを整理する一環として、複数の技術を組み合わせた考察を自身のブログで発信するようになりました。
コーチング体験後の影響
コーチングを受けた経験は、私の仕事や人生に対する向き合い方に深く影響を与えています。以前は、自分の専門性のなさに引け目を感じていましたが、今は自身の持つ広範な知識や経験こそがユニークな価値であると捉えられるようになりました。これにより、新しいことへの挑戦に対するハードルが下がり、知的な好奇心に基づいて様々な分野に積極的に関わっていけるようになりました。
キャリアに対する迷いがなくなったことで、日々の業務にも主体的に取り組めるようになり、より高いモチベーションを維持できています。また、自分自身の内面と向き合い、肯定的な自己認識を育めた経験は、他の人との関わり方にも変化をもたらしました。相手の多様な側面を受け入れ、その人の持つ可能性を引き出すことに関心を持つようになり、部下や同僚との対話においても、一方的にアドバイスするのではなく、相手の思考を促すような関わりを意識するようになりました。
これからコーチングを受ける人へのメッセージ
もし、ご自身の強みやキャリアの方向性について迷われている方がいらっしゃるなら、ぜひコーチングを検討されてみてはいかがでしょうか。私自身、「器用貧乏」というネガティブなラベルに縛られ、自身の可能性を見失いかけていましたが、コーチとの対話を通じて、そのラベルを外すことができ、自身の持つユニークな価値に気づくことができました。
コーチは答えを与えてくれるわけではありません。しかし、的確な問いかけと、安全で信頼できる関係性の中で行われる対話は、私たち自身の内面にある答えや、これまで気づかなかった可能性を引き出してくれます。自身の内面と深く向き合い、客観的な視点を得ることで、未来を切り拓くための新たな一歩を踏み出す勇気を得られるでしょう。皆様がご自身の可能性を最大限に活かす道を見つけられることを願っております。