複数の可能性に目が眩み、キャリアの方向性を見失いかけていた私が、確かな一歩を踏み出せたコーチング体験談
コーチングを受ける前の状況と悩み
私がコーチングを受ける前は、正直に申し上げて、頭の中が常に騒がしい状態でした。これまで様々な分野で経験を積んできたこともあり、新しいプロジェクトやキャリアパスの可能性が次々と見えてくる状況でした。どれもが魅力的に映り、挑戦してみたい気持ちがある一方で、「あれもこれも」と手を出してしまえば、どれも中途半端になってしまうのではないかという強い懸念もありました。
周囲からは「器用だね」「何でもできるね」と言われることが多かったのですが、自分自身の中では「一体自分は何者なのか」「本当に情熱を注ぎたいものは何なのか」が分からなくなり、一種のアイデンティティの危機を感じていました。エネルギーが様々な方向へ分散し、目の前のことに集中できない。結果として、どの道に進むべきか決めきれず、時間だけが過ぎていくような停滞感を抱えていました。漠然とした焦りや不安が常に心の中にあり、このままではいけないと感じていました。
コーチングを受けるきっかけ
このような状況が一年近く続いていたでしょうか。自己啓発書を読んだり、友人・知人に相談したりもしましたが、堂々巡りから抜け出せずにいました。そんな時、信頼している知人からコーチングの話を聞きました。彼は自身のキャリアの転換期にコーチングを受け、大きな変化を実感したと語っていました。
その話を聞いて、自分一人でこの状況を打破するのは難しいのかもしれない、客観的な視点と専門的なサポートが必要かもしれない、と感じました。特に、コーチは答えを与えるのではなく、クライアント自身が答えを見つける手助けをすると聞き、まさに今の自分に必要なのはこれだと直感しました。これまでの知識や経験といった「外側」にあるものではなく、自分自身の「内側」にある本当に大切にしたいものや価値観に焦点を当てるプロセスに惹かれたのです。
コーチングへの期待
コーチングを受けるにあたり、正直なところ、最初は「複数の選択肢の中から、私にとっての『正解』を教えてくれるのではないか」「進むべき『最適な道』を示してくれるのではないか」という、他者依存的な期待が少なからずありました。自分では決められないから、専門家であるコーチに決めてほしい、という気持ちがあったのだと思います。
しかし、セッションを重ねるうちに、その期待は徐々に変化していきました。コーチは決して答えを示唆するようなことはしません。代わりに、私自身の考えや感情、そして可能性について、深く掘り下げる問いかけを投げかけてくれました。それによって、外部の「正解」を探すのではなく、自分自身の内面にある「本当の願い」や「大切にしたい価値観」を明確にすることこそが重要であると気づき、その探求に期待するようになりました。
コーチングのプロセスと具体的な様子
セッションはオンラインで行われました。初めは自分の抱えている悩みや、目の前に見えている様々な可能性について、整理されていないまま話していました。コーチはただ静かに、しかし熱心に耳を傾けてくれます。話しながら、自分の中で混乱している部分や、言葉になっていない感情に気づくことが多々ありました。
特に印象に残っているのは、「それぞれの可能性について、具体的にどのような未来が見えますか」「その道に進むことで、あなたはどのような自分になれると思いますか」「もし、その可能性を『選ばない』としたら、何を失うことになるでしょうか」といった問いかけです。これらの問いは、単に選択肢の優劣を比較するのではなく、それぞれの道が私の人生や自分自身にどのような影響を与えるのか、より深く多角的に考えるきっかけを与えてくれました。
また、「もし、時間やお金、周囲の期待といった制約が一切なかったら、あなたは今、何に一番エネルギーを注ぎたいですか」という問いは、私の本質的な欲求に気づかせてくれるものでした。頭で考えた「べき論」や「できそうなこと」ではなく、心の奥底にある「本当にやりたいこと」に光が当たる感覚がありました。
セッションが進むにつれて、私の焦点は「どの道を選ぶか」から「私はどのような状態で在りたいか」「どのような価値を創造したいか」へとシフトしていきました。コーチは私の言葉の端々に現れる感情や体の反応にも注意を払い、「今、〇〇とおっしゃいましたが、そのときどんな気持ちがしましたか」「そのアイデアを話すとき、体のどこかに反応はありますか」といった問いを投げかけ、自分自身の内面をより深く感じ取ることを促してくれました。
得られた成果と変化
コーチングを通じて得られた最大の成果は、「複数の可能性の中から一つに絞らなければならない」という思い込みから解放されたことです。選択肢の優劣を決めるのではなく、それぞれの可能性が私の人生を構成する多様な「要素」であると捉え直すことができるようになりました。
そして、自分自身の「軸」や「大切にしたい価値観」が明確になったことで、迷いや不安が軽減されました。どの道を選ぶかという結果よりも、「どのような姿勢で取り組むか」「何のためにそれを行うか」というプロセスや目的に意識が向くようになりました。
その結果、停滞していた状況から抜け出し、具体的な行動への一歩を踏み出す決断ができました。複数の興味のうち、特にエネルギーが湧く特定の分野に集中的に取り組むことを選び、他の可能性は将来の連携や副次的な活動として位置付けるという、自分にとって納得のいく形を見つけることができたのです。自分自身の多様な側面を否定するのではなく、肯定的に受け入れ、それらを統合する視点を持つことができたと感じています。
コーチング体験後の影響
コーチングを受けた経験は、その後の私の仕事や人生に大きな影響を与えています。まず、日々の業務において、自分が何にエネルギーを注ぐべきか、迷いが少なくなりました。自身の軸に照らし合わせて、優先順位をつけ、集中して取り組むことができるようになったため、生産性も向上したと感じています。
また、新しい可能性やチャンスが現れた際も、以前のように「どれかを選ばなければ」とパニックになることはなくなりました。自身の明確な軸があるため、それが今の自分にとって本当に必要なものか、自身の目指す方向と合致しているか、冷静に判断できるようになりました。
自分自身の内面と深く向き合った経験は、自己理解を深め、自己肯定感を高めることにも繋がりました。自分の多様な興味や可能性を、欠点ではなく強みとして捉えられるようになったことは、何よりも大きな変化です。キャリアに対するオーナーシップを持ち、主体的に未来を切り拓いていくことへの自信が生まれました。
これからコーチングを受ける人へのメッセージ
もし今、あなたが何か迷いを抱えていたり、立ち止まっている感覚があるならば、コーチングを一つの選択肢として検討してみてはいかがでしょうか。コーチングは、あなたが抱える課題に対する「答え」をコーチが与えてくれるものではありません。それは、あなた自身の中にある答えを、コーチとの対話を通じて見つけ出す、自己探求の旅です。
私のように、明確な悩みはなくても、漠然としたモヤモヤや停滞感、あるいは複数の可能性に目が眩んで進むべき方向が見えないという状況も、コーチングにとっては十分なテーマとなります。あなたの内面にある声に耳を傾け、自分自身の可能性を広げ、新たな一歩を踏み出すための強力なサポートとなるはずです。迷いや不安を抱えている状態そのものが、新しい自分に出会うための大切なサインかもしれません。恐れずに、その扉を開いてみることをお勧めいたします。